学校長挨拶

聖母被昇天学院中学校高等学校 校長
江川昭夫

新入生のみなさん、保護者の皆様、ご入学、誠におめでとうございます。
校長の江川昭夫と申します。
私はこの春より聖母被昇天学院中学校高等学校の校長に赴任いたしました。ですから、実は私もみなさんと同じ1年生です。

数多い私立学校の中から、本校を選んでいただき誠にありがとうございます。親子で迎える新しい門出、期待と不安が混じり合っているところなのではないでしょうか?私たち、教職員は、みなさんの背中を押すべく、共に成長していきたいと思っています。どうか、安心して中学校生活、高校生活を送って欲しいものです。

最初に、皆さんに、「精神一到(いっとう)何事か成らざらん」ということわざを贈りたいと思います。「意志のある所には道がある」「やろうとする意志があればそれをする方法はあるものだ」という意味です。今日、この門出の日であれば、きっといつまでも覚えてもらえることわざだと思います。様々な局面で、わからない、などと言わずに、何か、方法を見つけるようにして欲しいのです。 周囲の教育環境を見てみましょう。
文科省も声高らかに教育改革を唱えています。「21世紀型の教育の導入」「2020年からの大学入試改革」いずれも「聖母被昇天学院」が62年前の創立当初からの設立理念につながるものばかりです。21年前の阪神淡路大震災、5年前の東日本大震災を経験して、「どんな状況でも自分で考えて問題を解決し、未来を託せる子どもを育てる」という信念を持ちました。女子教育、男子教育と別学ではなく、男女共学で育った未来を託せる生徒たちを育てたいのです。この想いが今の私の教師生活の礎(いしずえ)になっています。

多くの事柄には表の面と裏の面、言い換えれば明るい面と暗い面があります。現在、グローバリズムという言葉が盛んに言われていますが、グローバリズムは翻訳すれば「地球共同体主義」、つまり、各国が「国境の枠を取り払って」経済や環境や貧困の問題を乗り越えていこうという試みです。20世紀の戦争はそれぞれの国家がそれぞれの利益を主張した結果起こったものでした。ですから、グローバリズムはその反省に基づいて、「国家間の諍(いさか)いはもうやめにして、みんなで手を取り合って平和を築こうじゃないか」というわけですね。その結果、市場経済が活性化し、情報伝達も20年前とは比べものにならないほどに加速しました。例えば今、日本の文化、とりわけ秋葉原発信のサブカルなどはフランスの若者に大人気です。クールジャパンという言葉を聞いたことがある人もいるでしょう。日本の文化が瞬く間に世界に広がり、受け入れられる。グローバリズムの明るい面ですね。

では、暗い面とはなんでしょうか? 先ほど私はグローバリズムの定義のなかで、「国境の枠を取り払って」という言葉を使いました。これを例えば経済に当てはめれば、市場は全世界に開放されているということになります。するとどうなるでしょうか? 「国境の枠を取り払う」ということが、みんなで手を取り合うという意味ではなく、競争力の高さを活かした自国の利益追求のために用いられたのです。ここで起こるのが世界の画一化です。 ただ、見逃せないのは、世界経済が豊かになれば世界中の人たちが豊かになるかというと、現実には逆の現象が起きていて、ほんの一握りの人たちが豊かになって、多くの人たちが貧しくなっているということです。これをグローバリズムによる貧困の格差といいます。  
なぜこのようなことが起こるのでしょう? なぜ強い国は強いがためにますます強くなり、弱い国は弱いがためにますます弱くなるのでしょうか? 答えは簡単です。「国境の枠を取り払って」みんなで手を取りあうのではなく、「国境の枠を取り払って」みんなで競争すれば、強い国が勝つのは当たり前のことです。ここで、キーワードをひとつ挙げましょう。それは「非寛容」です。  
強い国が「非寛容」の心で弱い国に自国の価値観を押し付けようとすれば、なにが起こるでしょうか? 弱い国の価値観は踏みにじられます。そして、そこに暮らす人々の中には「あるもの」が芽生えます。怒りです。こうして生み出されるのがテロリストなのです。  
テロの恐ろしいところは、終わりが見えないということです。テロにはルールがありません。いつ、どこで起こるかのか、誰が起こすのか、それは起こってみないことにはわかりません。
2020年には東京でオリンピックが開催されます。オリンピックは世界最大のイベントで、東京、さらには日本の魅力を世界にアピールする絶好の機会です。ですが、世界が注目するからこそ、この平和の祭典すらもテロリストの標的になってしまう可能性も、残念ながら否定できません。  
ネガティブなこと、後ろ向きなことばかりを申し上げてしまいました。しかしながら、ここからはこうした現状を踏まえて、ポジティブな、前向きな、お話をしていきましょう。

現在の国際情勢の歪みは「非寛容」によってもたらされていると先ほどお話しました。では、問題解決のためにはどうしたらいいか? これも答えは簡単です。「非寛容」の反対のことをすればいいのです。そう、「寛容」です。  
新約聖書、コリント人への第一の手紙 第13章にはこのように書かれています。 「愛は寛容であり、愛は情け深い。また、ねたむことをしない。愛は高ぶらない、誇らない、無作法をしない、自分の利益を求めない、いらだたない、恨みをいだかない。不義を喜ばないで、真理を喜ぶ。そして、すべてを忍び、すべてを信じ、すべてを望み、すべてを耐える。」  
約2000年前に書かれたこの言葉を、私たちは未だ実践できていません。それほどまでに人間は欲深い存在であると自覚し、生きる道を見直さなければならないぎりぎりのところにきているのかもしれません。  
ここで重要になってくる考え方として、「ダイバーシティ」が挙げられます。これは簡単にいえば「多様性」という意味で、いろいろな価値観があるなかで、それらを尊重し合い、みんなでより良い関係を築いていこうというものです。異なった文化、異なった価値観があることを知り、それらを排除するのではなく、受け入れていかなければなりません。それはますます加速していくグローバル社会だからこそ、なおさら大切なことなのです。  

今、日本において最も求められているのは、グローバル社会の舵取りを行うリーダーです。「聖母被昇天学院のモットー 誠実 隣人愛喜び 世界の平和に貢献する人材の育成」です。ですから、そのグローバルリーダーを育成する学校として、大いに期待されています。その期待に応えるためにも、フランス、アメリカ、フィリピンなどへの海外研修はもちろん、学内の国際教育も充実をさせ、将来みなさんが国際人として活躍できるよう、しっかりとしたプログラムを用意しています。  
幸いにして、みなさんはこの学生生活のなかでたくさんの外国人と触れ合うことでしょう。外国人の友達もでき、SNSを使って頻繁に連絡を取り合うようになるかもしれません。これは全国の高校でも珍しい環境で、中学生あるは高校生の段階で世界を肌で感じられるのは、とても贅沢なことです。みなさんには海外の友達と話しをするときに、ぜひとも寛容さを忘れないでほしいと思います。これまで考えたこともなかったような価値観と出会うこともあるでしょう。そんなときには少しだけ戸惑ってしまうかもしれませんが、楽しんで受け入れてください。そして、ここで私から宿題を出します。海外の友達ができたら、みなさんの考える「日本の良いところ」を3つ、必ず伝えるようにしてください。  
グローバル化する社会が目指すべきは単一化ではなく多様化です。そのために、みなさんが日本人としての誇りを守りつつ、リーダーシップを発揮できるよう、微力ながら私も全力で応援していきます。  
そして、いつしか世界のリーダーとして活躍する日が来ることを 心から願って、私の式辞とさせていただきます。

新入生のみなさん、保護者の皆様、本日はご入学誠におめでとうございます。