WEB校長室

校長メッセージ47(NHKニュース おはよう日本 2018年10月18日(木)「人間は神になる!?『ホモ・デウス』とは」という特集から)

2018.12.21 江川校長メッセージ

さて、本日は2学期最後の私からのメッセージとなります。

終業式に先立って行われた『クリスマス祈りの集い』では、キリスト降誕の意義を再確認できたことでしょう。
イエス・キリストは私たちに“愛”を教えてくれます。愛とは、奪うのではなく、与えるものです。

『コリント人への手紙1 13章4節〜7節』にはこう書かれてあります。

「愛は寛容であり、愛は親切です。また人をねたみません。愛は自慢せず、高慢になりません。礼儀に反することをせず、自分の利益を求めず、 怒らず、人のした悪を思わず、不正を喜ばずに真理を喜びます。すべてをがまんし、すべてを信じ、すべてを期待し、すべてを耐え忍びます。」
喜びも悲しみも、自分ひとりで独占するのではなく、皆とともに分かちあうことではじめて愛の意味を知ることができるのです。

愛は実践です。みなさんは学院のモットーである「誠実、隣人愛、喜び」の精神で、日々愛を実践しているはずです。

さて昨年は、創立者聖マリ・ウージェニーの生誕200年でした。創立者が掲げた理念「世界の平和に貢献できる人の育成」を変わらず引き継ぎながら、現代のグローバル社会を意識した「21世紀型教育」はますます進行しています。

NHKニュース おはよう日本 2018年10月18日(木)「人間は神になる!?『ホモ・デウス』とは」(https://www.nhk.or.jp/ohayou/digest/2018/10/1018.html)という特集がありました。世界的ベストセラー『ホモ・デウス』の日本語版が9月に発売され、幅広い年代の人気を集めているそうです。その内容についてお話したいと思います。

人類の未来を読み解くこの本の著者はイスラエルの歴史学者、ユヴァル・ノア・ハラリ氏。世界で800万部が売れた大ベストセラー「サピエンス全史」では、人類250万年の歴史を「小麦に人間が家畜化された」などといった、独自の視点でひもとき、衝撃を与えました。

そのハラリ氏が、私たちに示した未来の人類の姿であり、タイトル、『ホモ・デウス』に込められたメッセージとは?

「ホモ・デウスは神の人、神聖な人という意味です。ラテン語でホモは人類、デウスは神。
今人類は、神へとアップグレードしているのです。」

引用:河出書房新社より

 

今、世界では、AIやバイオテクノロジーの技術が急速に進化しています。牛肉の成分を含むトマトや2倍のスピードで成長するトラフグ。どちらも、DNAの書き換えによって生まれました。歴史上はじめて人類が、神だけに許された領域へ踏み込み、その力を使って、自ら自分を作り変えようとしているのだと言います。


「人類は神の力だと信じられてきた能力を手にしようとしています。これまで私たちは技術によって周りの環境を変えてきましたが、自分自身を変えることはありませんでした。バイオテクノロジーとAIは、私たち自身を変える可能性があるのです。身体や脳、考えを変化させ、新たな人類が生まれようとしているのです。」

テクノロジーの進化によって、人間は単にAIにデータを提供するだけの存在になるおそれがあると警鐘を鳴らしています。将来、人間社会にはこれまでにない格差が生まれ、一部のエリート、ホモ・デウス以外は社会的な価値を持たない“無用者階級”と呼ばれる層に落ちぶれてしまうというのです。


“私たちは新しい巨大な非労働者階級の誕生を目の当たりにするかもしれない。社会の繁栄と力と華々しさに何の貢献もしない人々だ。この無用者階級は失業しているだけではない。雇用不能なのだ。”

「AIを使えばコンピュータによって多くの作業が行われるため、人間は労働市場から追い出され、多くの人が経済的価値や政治力を失い、“無用者階級”となります。バイオテクノロジーによって、経済的でなく、はじめて生物学的な不平等が生まれるのです。」

言いたいことというのは、歴史的な転換点に私たちがいるということです。無用者階級に陥らずに私たちが幸せになるには何が大切なのか。


「最も大切なことは、自分自身を知ることです。自分が何者であるのかを理解することです。」

自分を知る努力を怠ると、日々の選択をAIに支配され、欲望すら操作されるようになってしまう。それを防ぐには、みずからを知り、判断することだと説いています。

さらに、これからの未来を生きる子どもたちは、より厳しい自己変革が求められると言います。

“現在、子どもたちが学校で習うことの大半は、彼らが40歳の誕生日を迎えるころにはおそらく時代遅れになっているだろう。”

“人間が取り残されないためには、一生を通して学び続け、繰り返し自分を作り変えるしかなくなるだろう。”

「今一番大きな問題だと感じているのは、子どもたちのことです。彼らは歴史上はじめて、自分が成長したときの世の中を予測できない世代となります。彼らに伝えたいことは、人生を通じて変化すること。そのために、柔軟な心を持つことが、とても大切だということです。」

厳しい現実を突きつけられたかと思いますが、ハラリ氏は未来を悲観しているわけではありません。こんな歴史上にない変革の時代だからこそ、『ボーッと生きていてはいけないよ』ということなのです。

自分らしさとは何なのか、「考え抜き、学び続けることの大切さ」を訴えていると感じました。

創立者聖マリ・ウージェニーが掲げた理念「世界の平和に貢献できる人の育成」を変わらず引き継ぎながら、アサンプション国際では、「21世紀の社会で活躍できる人」を目指しています。そのなかには、「AIに負けない人になる」という目標も掲げたいです。
その意味は「AIの方が優れている仕事に関してはAIに任せ、私たち人間は自分たちの役割や価値と向き合いながら、『自分らしい生き方』を模索していかなければならない。」ということなのです。

『自分らしい生き方』を模索するために、持続可能な開発目標「グローバルゴールズ(SDGs)」を意識しながら、探究科の学習の中で課題解決型授業を展開しています。

世界で今起きている問題に目を向けながら、みんなで考え、話し合い、解決の道を討論しています。みなさんひとりにこれからの未来についての「正解のない問い」に挑戦してもらっています。

知識を集積し、偏差値を上げ、難関大学に合格することだけを目的にした学びは、これからの時代では通用しません。世界の諸問題の解決に向けた立案・討論といった豊かな学びを多感な中学・高校時代から経験することで、学院のモット―「誠実、隣人愛、喜び:世界の平和に貢献できる人」の礎(いしづえ)を築いていっています。
AIやロボットでは代用できない、直感、センス、コミュニケーション、発想、身体性などの能力を磨いていく、これも「21世紀型教育」の目的です。

さて、来年はどんな年になるでしょうか。新しい年が「平安」でありますように。

最後に “Merry Christmas and A Happy New Year”

 

アサンプション国際中学校高等学校 校長 江川昭夫